気が付けば実家の多頭飼育崩壊が始まっていたけれど終わらせてきた話

突然ですが、みなさんは実家が多頭飼育崩壊していたことはありますか?

私はあります!!!!

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E9%A0%AD%E9%A3%BC%E8%82%B2%E5%B4%A9%E5%A3%8A

多頭飼育崩壊(たとうしいくほうかい)とは、ペットの動物を多数飼育した飼い主が、無秩序な飼い方による異常繁殖の末、飼育不可能となる現象。

 

昨年(2020年)末、きょうだいから漏れ聞く話から、なんか実家の猫がすごく増えているのでは?疑惑が立ち上がりました。もともとヤバ親なので疎遠にしていたため実態がわからない。真相を探るために帰省しました。

そこで私が見たのは、20頭の猫が実家で飼育されている様子。10頭以上避妊去勢手術がなされておらず、生後2か月~半年程度とみられる子猫もいました。さらには、(後に判明したことですが)うち3頭のメス猫が妊娠中でした。

そんなにたくさんの猫がいるものだから家の中はもちろん荒れています。玄関ドアを開けた瞬間から動物と糞尿のきつい臭いがし、壁紙はボロボロ。しかし両親は平然としていて、『普通』に過ごしている……。

何事もないかのように「猫が増えたから一階は猫のスペースにして、私らはほとんど二階で過ごしてるんよ」と両親に言われたときは、アレッもしかして世にも奇妙な物語の世界に迷い込んだかな?と思いました。

え?私の実家……ヤバすぎ!?これ、私が今見て見ぬふりをしたら、数年後にはさらに増えた猫が家中すし詰め状態になって、最終的にヤフーニュースに載るやつでは?これから一体、どうなっちゃうの~~!!?

 

いち早く猫の安否を知りたい方のために結論から言うと、至る所にSOSを出したことでNPO法人の方々の手をお借りすることができ、なんと10日足らずで全頭避妊去勢手術を完了させることができました。本当に感謝してもし足りない。

 

とは言え、決してとんとん拍子に物事を進めることができたわけではありません。

何よりも困ったのは最初の段階である「SOSを出す」というところ。

「多頭飼育崩壊現場にレスキューが入り、悲惨な環境に置かれていた数十頭もの動物が救出された」というニュースは幾度となく見たことがあっても、「多頭飼育崩壊に至ったときにはまずここに連絡!」などという啓蒙ポスターは見たことがない。

多頭飼育崩壊についての記事も「なぜ多頭飼育崩壊に至ってしまったのか」「どう防止していくか」という『経緯』にフォーカスしているものばかり。(もちろん大切なことです)

しかし既に多頭飼育崩壊が起こってしまっている以上、今まさに欲しい情報は「どうすればこの状況を解決に向かわせることができるのか」です。多少Google検索をした程度では、本当に困っている当事者家族にとって有益な情報は得られませんでした。

 

このブログでは、当時の私が何を考えてどのような行動を起こしたことで、全頭避妊去勢手術に至れたかという部分のみ書きます。そもそも両親が何を考えて何年も手術せず猫を放置してたかなんてわかんないし……。

今まさに多頭飼育崩壊に困っている当事者/当事者家族の方。多頭飼育崩壊を早期発見したいと考えている行政/法人の方。多くの人に読んでいただけることを期待しています。

 

年末年始悪戦苦闘記録

12/29 現状認識

帰省。現状を知り絶句。

「どの組織に相談するべきか」「相談したところで本当に対処してもらえるのか」「対処されなかった場合にどうすればいいのか」「このまま猫たちを見殺しにするのか?」「この子たちは最悪の場合殺処分されてしまうのか??」と様々なことを考え続けてしまい朝方まで眠れず。

 

12/30~1/3 相談先探し

両親に行政・NPO法人への相談を打診。連絡とかは全部私がやるから!!と言い切ったことで了承を得ました。私の貯金が削られる覚悟も固め、三が日明けの1/4に即行動できるように下調べを始めました。

とりあえずGoogle検索。「多頭飼育崩壊」「多頭飼育崩壊 救済」「多頭飼育崩壊 どうする」「多頭飼育崩壊 助けて」etc…

上位検索結果に出てくるのはWikipedia、ニュースサイト、そしてどうぶつ基金や全国のNPO法人のウェブページ。そこから10ページ目くらいまで見ても、「多頭飼育崩壊に至ったときにどうするか」というハウツーをまとめてくれたものはない。

じゃあ、どうぶつ基金ってよく名前を聞くし、全国の多頭飼育崩壊救済レポートもHPに記載されているし、ここになら助けを求められるのでは?

https://business.form-mailer.jp/fms/900161be54102

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考えて悩んでたどり着いた場所で拒絶されると、「詰みかな?」と一瞬頭をよぎりますね。

後述しますが、行政、助けになってくれなかったので……。なぜ本人/家族からの申請を受け付けていないのか、どうぶつ基金関係者の方がもしこの記事を読んでいるのなら理由をご教授願いたいです。

 

どうぶつ基金の多頭飼育崩壊救済レポートを見ると、近隣住民の保健所/役所への通報が介入につながったケースが多いようでした。中には「役所が対応しなかった」ケースも見受けられるけど、役所の環境課・保健所に連絡するに越したことはないため、連絡リストに追加。

 

次にNPO法人探し。

内閣府NPO法人ポータルサイトhttps://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/)をパッと見ただけでも数が!多い!!!

いわゆる有名どころと言える、関西全域で活動しているような団体。実家に近い地域で活動している団体。ブログ等の更新がほとんど無く実態がわからない団体。動物保護活動を行っている団体。引き取りは行っていないと書いている団体。いや、どこに頼ればええんや!?判断基準がわからん。

結局、定期的に活動している様子がHP等に記載されていて、かつ多頭飼育崩壊のレスキューを行った実績のある団体を数件選び、片っ端から連絡してみることにしました。

 

1/4 相談

実はこの日の午後には帰らなければならなかったためスピード勝負!!!

朝起きてすぐ、一つ目のNPO法人に電話をかけました。

電話がつながった瞬間、安心感とここ数日のストレスがどっと押し寄せてきて初手で号泣。泣きながら状況を説明すると、しっかり話を聞いてくださり、すぐに実家の様子を見に来てくださるとのこと。しかしその前に「行政に現状を把握してもらわないといけないため、役所にも連絡してください」と言われたので、一度役所に電話することに。

 

というわけで、地元の役所の環境課に電話。出られた方に実家が多頭飼育崩壊していることを伝えると、「それは○○課なのでお繋ぎします」繋がれた先で同じことを説明すると「それなら保健所に連絡してください」。保健所の電話番号を教えていただき市役所での対応は終了。

あれ?たらい回しが発生しているのでは??

 

気を取り直し次は保健所。電話をかけて、経緯を簡単に説明。どうか対処していただけないかと聞いたときの担当者の返答を、よ~く覚えています。

「なるほど、そんな状況になっていて、あなたはご実家が心配ということですね……。」

……!?「心配」!!?そんな段階を超えて、「もう身内だけでは処理できない」と悟ったから勇気を振り絞って電話をしているのだが……!!!??

続けて担当者が告げたのは、「避妊去勢手術を行って、里親探しをしてください。動物病院経由でも里親募集がかけられると思います。」

じ、自明〜〜!!!!!そんなことわかってるけど、当人が対処せず自分じゃどうしようもなくなったため行政に助けを貸してほしくて電話をかけたのだけど!!?……と言い返そうとしたけれど、かなり精神的に疲弊していたし、もう協力してくれる団体見つけたし……。話をするのが面倒くさくなってしまって、「はい、わかりました、ありがとうございます。」と返し、そのまま電話を切りました。

 

その後、NPO法人の方に行政は協力してくれなかったという旨を再度電話して伝えました。その日のうちに実家の様子を見に来てくださり、私が自分の家に帰った後も連絡を取り合いながら順番に捕獲→避妊去勢手術を繰り返していただいたことで、猫が20頭より増えることなく処置を終えることができました。

 

 

何が問題だったか

当事者から見た問題提言ブログを書こう書こうと思っている間に、環境省が『社会福祉施策と連携した多頭飼育対策に関する検討会』の第6回を令和3年2月3日に開催し、その資料『社会福祉施策と連携した多頭飼育対策ガイドライン(案)』が公開されていました。

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/renkei/r02_06/mat01.pdf

非常に良い資料です。100ページ超ありますが、多頭飼育崩壊がどのような社会的背景によって引き起こされるものなのか、実際に問題が発生した際にどのような対応を行っていくべきかが書かれています。これ実家の問題が発覚したときに読みたかった~~!!!

 

多頭飼育問題の背景には、飼い主の経済的困窮や社会的孤立等の問題が複雑に絡んでいます。飼い主の中には支援を必要とする人も多く、動物虐待の罰則を適用するだけでは問題の解決を図ることは難しいため、対応にあたっては動物愛護管理分野だけでなく社会福祉分野の行政職員や専門家等と連携した施策展開が必要です。また、動物愛護管理行政、社会福祉行政以外にも、公衆衛生行政、警察行政を横断する問題であり、どの側面から問題が発覚するか、どの側面がクローズアップされるかによって、政策的な位置づけと対処すべき担当組織が異なるため、対応が難しくなるといった問題認識についても明らかとなりました。

 

 

連携なくして解決なし

 

連携にあたっては、体制の構築も重要です。関係主体は案件ごとに異なりますが、多頭飼 育問題に関わることが多い主体を中心に、常日頃から情報交換を行うこと、連絡窓口を明ら かにすること、対応の仕方を決めておくことによって、多頭飼育問題の早期発見やスムーズ な対応が可能となります。多くの機関や団体、ボランティア、社会福祉事業者等が多頭飼育 問題への感度を高めることによって、そのきっかけをいち早く見つけ、関係主体に適切に繋げることによって、事態の深刻化を防ぐことが期待されます。対応方法のすき間に落ちることで、対応できないという事態が生じることのないよう、関係主体がそれぞれ取り組むことのできることを持ち寄ること、責任の所在が不明な事象については誰が対応すべきか早期に検討すること、飼い主の特質等により主導権を持って対応にあたる部局を決めることが求められます。

 

良い文章。ぶっちゃけこれ以上言うことないです。

多頭飼育崩壊に至る原因は様々で個々のケースに応じた対応を求められるが、地域・行政・NPO・ボランティア等の連携体制を適切に整えることこそ、事態の早期発見・解決につながる。

地域によっては連携できているところもあるのでしょうが、実家の管轄の自治体では残念ながらその体制は整っていませんでした。

もしNPO法人さんにもリソース不足などが理由で協力を断られていたとしたら、私はこの問題をあきらめて、近隣住民のふりをして役所に通報だけして、二度と実家に立ち入らなかったと思います。1人で15頭もの猫を捕獲してレンタカー借りて動物病院までピストン輸送するのって現実的な解決策だと思いますか?

 

事態を未然に防ぐことができるのが理想。しかし事態が起こってしまった場合の対策のネットワークをさらに強化していくべきです。

これ以上不幸な動物が増えないことを望みます。

 

 

これから

ひとまずこれ以上頭数が増えないということで一安心なのですが、こんなに頭数がいると人間も猫も満足な生活ができないため、里子に出す必要があります。15頭ほど。気の遠くなる話ですね~~!!!!

ただ、1頭引き取っていただいた里親さんによると、「皿からごはんを食べず、床に落ちたものだけ食べる」「シンク内の生ごみを漁る」などの悪癖が残っている子もいるみたいなので、猫飼い初心者さんにはオススメできないかもしれません……。

ていうか里親募集って何をどうするのが正解なんですか?それすらもわからねえ……。

 

とりあえず猫たち載せとこ~っと!!!

本当に里親希望していただける方がおられましたら、私のTwitterのDMに連絡くださ~い!協力していただいたNPO法人さんの連絡先を教えます。

twitter.com

 

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助けてくれ~~~~!!!!!!!!!!!!

 

 

(2021/2/24 追記)

嬉しいことにたくさんの方に読んでいただけているようですね。ありがとうございます。

 

今後実家や猫たちがどうなるかは不明瞭なままですが……新しく猫を拾ってまた増やす、なんてことがあるかもしれないと思うと怖い通り越してちょっとウケますね!(ウケない)

今は少しずつではありますがNPO法人さんと協力して里親探しをしています。デカいケージを数個買って実家に送りつけたことで、猫内カーストが低い子もごはんを食べられるようになったのですが、それでも環境がいいとは言えないので……違う家で幸せになってほしいよ〜〜!!!!

 

今回お世話になったNPO法人『Life for cats in NARA』さんに許可をいただいたので、サイトURLを貼らせていただきます。

https://www.lfc-nara.org/

もしあの時お力を貸していただけなければ、今ごろまた子猫が生まれて破滅への道を着々と進んでいたことでしょう。

よろしければ寄付のご協力をお願いいたします。